『となりの億り人』 大江秀樹 著
「億り人」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
億り人とは、1億円以上の金融資産を築いた人のこと。派手に儲けた人を想像しがちですが、実際はごく普通の、真面目で堅実な人が多いそうです。
日本における「億り人」の実態
2019年のデータによると、日本の全世帯数5572万のうち、133万世帯(2.4%)が億り人。
給与が伸び悩む一方で、金融資産は着実に増加しています。特に若い世代は「生活の無駄をなくし、コツコツ投資する」という価値観にシフトしている点が印象的です。
FIREブームと本質
本書では、FIRE(Financial Independence, Retire Early)についても触れられています。大切なのは「FI=経済的自立」であり、「RE=早期退職」はその次に来るもの。しかし現実には、退職ばかりが強調されがちだと著者は指摘します。
本当のお金持ちは地味
世間がイメージする「立派な家」「華やかなパーティー」といった生活は、実際には資産の裏付けがないケースも多いそうです。真の資産家ほど、質素で堅実な暮らしをしているとのこと。
サラリーマンと自営・フリーランスの強み
本書では「お金を増やすための行動習慣」を、サラリーマンと自営・フリーランスの特徴として整理しています。
- 自営・フリーランス
- 約束を必ず守る
- 決断が早い
- 机や部屋が整理整頓されている
- サラリーマン
- 天引きで貯蓄を習慣化
- 生活パターンを確立
- 自分で考え、安易に人に頼らない
いずれも「堅実な積み重ね」が共通点として浮かび上がります。
億り人が大切にする「非地位財」
著者が強調するのは「非地位財」という考え方。
地位財(他人との比較で価値が生まれるもの)ではなく、自分にとって本質的な喜びを感じる非地位財を大事にしている点が、億り人の特徴だといいます。
投資に近道はない
多くの億り人は、長期的に成長企業へ投資し続けてきた人たち。短期売買で成功した人は少なく、「市場に居続けること」が何よりも重要と説かれます。
「暴落時に売る」は禁物。
自分が何に投資しているのか理解せずに資金を投じることこそ、最大のリスクです。
「となりの億り人」たちの実像
第4章では、実際に4名の億り人へのインタビューが掲載されています。驚くのは、彼らが決して派手な投資家ではないこと。堅実な貯金と質素な生活の積み重ねが資産形成のベースになっています。
まとめ
本書のメッセージはシンプルです。
資産形成に近道はなく、自分に合った方法で無駄を省き、地道に貯蓄と投資を続けること。それが気づけば「億り人」への道につながっている、ということです。
巻末では関連書籍も紹介されており、さらに学びを深めたい人にとっても良いガイドになるでしょう。