『外資系1年目の英語勉強法』 越川慎司
著者の越川氏は、日本マイクロソフトで十数年勤務し、現在は株式会社クロスリバーのCEOとして活躍している人物です。
大学卒業後、いわゆるJTC(日本の伝統的な企業)で6年間勤務した後、マイクロソフトに入社。当初は自分なりに英語ができると思っていたものの、入社してすぐにその力不足を痛感したといいます。そこから奮起して英語学習に取り組み、ついには業務執行役員にまで昇進。
本書は、彼がビジネスで使える英語力を身につけるまでのプロセスや学習メソッドを、わかりやすくフレームワークに落とし込んだ一冊です。
本書のポイントは、「自分が実践した英語学習法を、誰にでも再現可能な形で体系化した」という点にあります。
実は、英語を母語とする人口はそれほど多くなく、世界で15~20億人程度。つまり、約70%の英語話者は非ネイティブなのです。
したがって、日本人が英語をうまく話せないのは「ネイティブでないから」ではなく、「完璧な英語を話さなければならない」という思い込みが原因だと、著者は指摘しています。
まずは「伝わればよい」という考え方を持つことから始めましょう。重要なのは、発音や文法の正確さではなく、相手が知りたいことに的確に答え、相手が理解できるように伝えることです。
■1年目の英語学習で捨てるべきものと、やるべきこと
捨てるべきもの
- 完璧な英語:正確さよりも「伝わること」を優先
- 複雑な文法:まずは基本の「SVO」構文から
- ネイティブ並みの発音:下手でも伝われば問題なし
- 即答しなければならないという思い込み:「I will get back to you later.(後でお答えします)」でOK
やるべきこと
- 24時間「英語漬け」の体験
- アウトプットの量を増やす
- 英語学習コミュニティに参加:練習相手を見つけやすくなる
- アナロジーに慣れる:知らない単語が出てきても、前後の文脈から意味を推測する力を養う
■「自己選択権の獲得」を長期目標に据える
ビジネスの現場である程度自由に英語を話せるようになると、自分が望むキャリアや働き方を選びやすくなります。
■再現性の高い「学習の習慣化」を目指す
- ルーティン化:英語学習を習慣化し、行動のスイッチにする
- ハードルを下げて、自己効力感を高める:極端に言えば、「1日1単語を覚える」でも十分
- 義務から主体的な学びへ:将来の自分をイメージし、達成時の報酬を設定する
■脳のゴールデンタイムを活用する
- 朝活学習法:起床後すぐに英語ニュースやポッドキャストを聞いたり、英語記事をシャドーイングするなど、朝の時間帯を有効活用
■英語学習のステップ
- ボキャブラリー(インプット)
- リーディング(インプット)
- ライティング(アウトプット)
- リスニング(インプット)
- スピーキング(アウトプット)
このサイクルを繰り返すことで、着実に英語力が伸びていきます。
著者の成功の要因は、「行動力にあった」と言えるでしょう。自分のキャリアに役立つと判断したら、すぐに実践することが何よりも大切です。
なお、蛇足ではありますが、このような実用書を執筆する方は、あとがきで「今、私は〜でこの原稿を書いています」と始めるケースが多いように思います。これも一種の“著者あるある”なフレームワークなのでしょうか。越川氏もハワイで原稿を書かれていたそうです。
いずれにしても、本書に書かれている内容を素直に、そして地道に実践していけば、ビジネスで使える英語を習得することは十分可能だと感じました。
「自分こそは」と思われる方は、ぜひチャレンジしてみてください。